その他の研究結果


ここでは特許の項で述べられた以外の研究結果についてお話し致します。

大豆麴乳酸菌発酵液の自然免疫賦活効果:

BALB/c マウスを用いてのネズミチフス菌に対する生体外試験

中山雅晴 (Nakayama Masaharu)、前沢留美子 (Maezawa Rumiko)、岡田拓也(Okada Takuya)

 


20248月、食と健康の専門誌である New Food Industry 誌に、

喜源バイオジェニックス研究所の中山博士、前沢助手と岡田研究員による共著論文が掲載されましたので、要旨をお伝えいたします。

 

大豆麴乳酸菌発酵液を構成する乳酸菌の免疫賦活効果に関しては、過去、個別に NFI 誌で報告済みですが、

大豆麴乳酸菌発酵液全体としての効果に関する報告は今回が初めてです。

今回、初めにネズミチフス菌(Salmonella Typhimurium)に対するマウス生残試験を行い、その結果を踏まえ、

腹腔マクロファージを用いて生体外試験を行いました。

ネズミチフス菌は、ある種のマウスに対して致死性を示す細菌です。

マウスには、ネズミチフス菌に対して感受性のあるBALB/c マウスを用いました。

 

 

-1 は生残試験の結果です。

 

初めに大豆麴乳酸菌発酵液を 10%2%0.4%

マウスの餌に混ぜ、4 週間与えました。

その後に 10 億個水準のネズミチフス菌をマウスの

腹腔に接種し、観察を続けました。

その結果、図から明らかなように、

0.4% の大豆麴乳酸菌発酵液を与えたマウスの全てが

菌の接種 2 日目には死んでしまいましたが、

2% に与えたマウスでは 菌の接種 1 週間後においても

33.3% が生き残り、

10% では 44.4% が 1 週間後まで生き残りました。

すなわち、大豆麴乳酸菌発酵液の投与量に比例して

ネズミチフス菌に対する抵抗力が増加し、

より多くのマウスが生き残ることができる、 

という結果が得られました。

 

 

マウスの腹腔内には一定数のマクロファージが常在し、細菌などの侵入から生体を守っておりますので、

この結果から、マウスの腹腔に直接接種されたネズミチフス菌は腹腔内のマクロファージによって排除された、

そして、大豆麴乳酸菌発酵液の投与によりこれらのマクロファージの菌排除能が亢進したためマウスの生残率が向上した、

との仮説が得られます。

 

そこで、マウス腹腔マクロファージを生きたまま採取し、ネズミチフス菌に対する排除能を調べました。

 

初めに、

大豆麴乳酸菌発酵液を上清、菌体、繊維の分画に分け、

それぞれを 10% にマウスの餌に混ぜて

2 週間与えました。

その後に腹腔マクロファージを生きたまま採取し、

一定数のネズミチフス菌と混ぜ、

マクロファージの菌に対する貪食能を測定しました。

貪食とは、マクロファージなどが異物を

文字通りに「食べる」ことを意味する言葉です。

その結果、図-2 に示すように、

大豆麴乳酸菌発酵液(赤)と繊維分画(水色)に

高い貪食活性があることが分かりました。

図の文字が小さくて少し見づらいですが、 

SKL が大豆麴乳酸菌発酵液を意味します。

 

 

 

 

次に、腹腔マクロファージの殺菌能を調べました。

殺菌能とは、貪食した細菌を殺す能力のことです。

その結果、図-3 に示すように、

大豆麴乳酸菌発酵液そのものと 

菌体分画(青)に活性があることが分かりました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

以上の結果から、

 

1) 大豆麴乳酸菌発酵液をマウスに与えると

  ネズミチフス菌に対する抵抗力が増加する。

2) これはマウスの腹腔マクロファージの菌排除能が

  増加することによると思われる。

3) 腹腔マクロファージを用いた実験結果から、

   腹腔マクロファージの貪食能と殺菌能の増加が

   菌排除能に結び付いたと考えられる 

 

と導くことができます。

 

 

 

 

 

個体としてのマウスの菌排除能を考えた場合は、以上に加え、

マウス腹腔内に誘導されたマクロファージの数も問題となりますので、

マウス 1 個体当たりの菌排除能は、貪食率 × 殺菌率 × 腹腔マクロファージ数で表すことができます。

-4 はマウス 1 個体当たりの菌排除能として表した図です。

図から明らかなように、大豆麴乳酸菌発酵液を 10% 濃度にマウスに与えた場合、与えていない対照と比較して、

2 倍以上の菌排除能の増加が認められました。

これまでの実験結果から明らかなように、

腹腔マクロファージの貪食能は繊維分画、殺菌能は菌体分画に活性が認められましたので、

大豆麴乳酸菌発酵液そのものの菌排除能は「両者の総和によるもの」と結論しました。

 

菌体分画には乳酸菌が、繊維分画には麹菌の菌糸体が豊富に含まれますので、

前者は乳酸菌菌体を構成するペプチドグリカン、後者は菌糸体を構成するベータグルカンが 

それぞれ殺菌と貪食活性の主体であろうと考えました。

 

 

最後に、炎症を引き起こすサイトカインの一つ、

TNF-α に関して調べました。

 

マウスの脾臓から細胞を採取し、

これにネズミチフス菌を接種して

脾臓細胞の TNF-α 産生量を調べたところ、

興味深いことに、

大豆麴乳酸菌発酵液、並びにその分画を与えたマウスの

脾臓細胞では、

TNF-α 産生量が対照に比べて低下しました。

特に繊維分画を与えたマウスでは、他の分画と比べ、

TNF-α の産生がより抑制される、

という結果が得られました。

また、全てのマウスの血中において、

TNF-α は全く検出されませんでした。

 

 

以上の結果から、少なくとも大豆麴乳酸菌発酵液を「経口的に」与えた場合は

大豆麴乳酸菌発酵液はマウスに対して炎症反応を誘発しないと考えられます。

TNF-α は病原菌の感染時などに産生され、生体から病原菌を排除する際に働く重要なサイトカインですが、

これの過剰な産生は逆に生体に有害に働くことがあります。

今回は測定していないので確かなことは言えませんが、恐らく、ネズミチフス菌を接種して行われた生残試験においては

マウス個体は TNF-α を産生しているのだと思われます。

ネズミチフス菌そのものが TNF-α の産生を誘導すると考えられますが、その場合、

大豆麴乳酸菌発酵液が TNF-α の産生増強に働くのか、あるいは逆に抑制的に働くのか、分かりません。

ネズミチフス菌排除と生体への侵襲とのバランスをとる方向に働く可能性も考えられます。

 

結論として、今回の結果から、大豆麴乳酸菌発酵液を経口的に与えた場合、

大豆麴乳酸菌発酵液そのものは TNF-α を直接に誘導せずに他の因子(マクロファージの菌排除能など)を増強する、

その結果、ネズミチフス菌に対する抵抗性が増す、と結論づけました。 

ジメチルヒドラジン誘発マウス大腸粘膜異常陰窩巣と大腸粘膜細胞並びに肝臓細胞DNA損傷に対する大豆麹乳酸菌発酵液の抑制効果

中山雅晴 (Nakayama Masaharu)、清水美帆 (Shimizu Miho)

 


20236月、食と健康の専門誌である New Food Industry 誌に、

喜源バイオジェニックス研究所の中山博士と清水研究員による共著論文が掲載されましたので、要旨をお伝えいたします。

 

大腸ガンは日本人のガン罹患総数の1位を占め、死亡数順位では肺ガンに続いて2位に位置する疾病です。

女性に限れば、ガン死亡数順位の1位が大腸ガンによるものです。

従いまして、これを予防できれば日本人の健康寿命はさらに延びるはずです。

大腸ガンの誘因としては、喫煙、過度の飲酒、加工肉や赤身肉の過剰摂取、運動不足など、生活習慣に関わる因子が指摘されております。

従いまして、これらの生活習慣を改善すると同時に、より積極的な予防法を推進することが望まれます。

 

喜源バイオジェニックス研究所では、ながらく乳酸菌による大腸ガン予防について研究してまいりました。

 

今回、大豆麴乳酸菌発酵液の大腸ガン予防効果に関してマウスを用いた実験を行い、興味深い結果が得られましたので、ご報告いたします。

 

今回は、

ジメチルヒドラジン(DMH)と呼ばれる発ガン物質を

マウスに注射して、

大腸ガンの前ガン病変と考えられる異常陰窩巣

(いじょういんかそう、aberrant crypt foci: ACF)

作製しました。

ACFとは、分かりやすく言えば、

ヒトのポリープに相当するものです。

 

大腸ポリープのすべてが大腸ガンになるわけではありませんが、

ポリープの数が多い大腸は「大腸環境」が悪いと考えられます。

 

マウスの餌に大豆麴乳酸菌発酵液を混ぜて与え、

その間にDMHを注射してACFを作らせました。

                                              大豆麴乳酸菌発酵液を70日間与えた後に

                                解剖してACFの数を数えたところ、                          

                                              大豆麴乳酸菌発酵液の濃度に比例して                                                              

                                              ACF数の減少が見られました(左図)。

 

                                              グラフでSKLというのは大豆麴乳酸菌発酵液のことです。

大豆麴乳酸菌発酵液を与えると

ACF(ポリープ)の減少が見られたことから、次に、

大豆麴乳酸菌発酵液がDMHによるDNA損傷を抑制するか、

調べました。

DNAの損傷が細胞の変異を誘発し、

その後のACF(ポリープ)の発生につながり、

最終的に大腸ガンにつながる、と考えられるため、

この最初の段階を抑制すれば、

大腸ガンの発生を抑制できる可能性があります。

 

同じように大豆麴乳酸菌発酵液を餌に混ぜてマウスに与え、

2週間後にDMHを注射して肝臓と大腸粘膜の細胞を採取し、

コメット法と呼ばれる方法を用いて

細胞核DNAの損傷の度合いを測定したところ、

ACFの場合と同じように、

大豆麴乳酸菌発酵液濃度に比例してDNAの損傷が抑えられました。

 

右の図は、大腸粘膜細胞の結果です。

 

棒グラフの長さが短いほど損傷が抑制されていることを表しています。

 

次に、大豆麴乳酸菌発酵液をいくつかの分画に分けて

各々のDNA損傷の抑制の程度を測りました。

まず初めに、大豆麴乳酸菌発酵液とその培地、

遠心後の上清と沈査に分けてマウスに与え、

その後にDMHを注射して

肝臓と大腸粘膜細胞のDNA損傷を

コメット法で測りました。

その結果、興味深いことに、

沈査分画に活性が見られました。

沈査分画は繊維分と乳酸菌菌体とで構成されているので、

その後さらにこの両者に関して調べてみました。

 

左の図は肝臓細胞のDNA損傷の抑制度を表しています。

 

 

沈査分画を菌体と繊維に分け、同じように調べたところ、

菌体分画に活性が見られました。

右の図は大腸粘膜細胞の結果で、

紺色の棒グラフが菌体分画の結果です。

 

以上の結果から、大豆麴乳酸菌発酵液のACF抑制効果は、

乳酸菌菌体による細胞のDNA損傷抑制効果によるものである

可能性が高まりました。

ACF抑制が大腸ガンの抑制につながることは

以前の実験結果から明らかとなっているので、

乳酸菌菌体によるDNA損傷抑制がACFの抑制につながり、

ACFの抑制が大腸ガンの抑制につながる、

という関係が導かれます。

今回、乳酸菌が

チトクロームP450酵素(CYP) の誘導を阻害した結果、

DNA損傷抑制につながったのか調べました。

発ガン物質の種類にもよりますが、

環境中では発ガン性がなく、生体内に取り込まれたのち、

CYP酵素によって発ガン性を得る物質も数多くあります。

免疫染色法とウエスタンブロッティング法の両者を用いて

調べたところ、

乳酸菌はCYP酵素の発現を抑制することはない、

と結論されました。

従いまして、乳酸菌は、別の方法で、

発ガン物質のDNA毒性を抑制することが示唆されました。 

 

左の図は、肝臓組織で発現しているCYP2E1酵素です。

茶色く染まっている部分がそうです

 

大豆麴乳酸菌発酵液は、製造後、高圧加熱滅菌されて供給されます。

従いまして、今回の実験で用いた乳酸菌菌体も、加熱滅菌された死菌体です。

このような死菌体を経口的に投与してDMHによる細胞DNA損傷が抑制された、という結果は驚きです。

 

これまで喜源バイオジェニックス研究所では、

バーベキューや焼き肉などで発生する発ガン物質であるヘテロサイクリックアミン(HCA) に対する

乳酸菌の抗変異原効果を、

エームズテストという方法を用いて調べてきました。

その結果は、下の項目で比較的詳細に述べられています。

また、これらの完全な論文は New Food Industry 誌のホームページで見ることができます。

これまでのHCAに対する実験結果から、乳酸菌菌体が保有する抗変異原物質が

マウスにおけるDMHDNA毒性をも抑制する可能性がでてきたように思えます。

HCAに対する抗変異原物質は耐熱性かつ耐消化液性であり、胃液中に容易に菌体から抽出されます。 

 

現在、喜源バイオジェニックス研究所は、この物質の特定に向けて精力的に研究中です。

 

 

 

乳酸菌菌体より溶出する可溶性抗変異原物質と菌体の吸着性の  複素環式アミンに対する関係 

岡田拓也 (Okada Takuya)、清水美帆 (Shimizu Miho)、中山雅晴 (Nakayama Masaharu)

 


20233月、食と健康の専門誌である New Food Industry 誌に、

喜源バイオジェニックス研究所の岡田研究員、清水研究員、中山所長の共著論文が掲載されましたので、要旨をお伝えいたします。

 

今回は前報の続報となりますので、まずは直近の論文の要約、

複素環式アミンに対して抗変異原性を有する可溶性因子を乳酸菌菌体懸濁塩溶液中に産生するための

至適条件並びに当該因子の特徴をご一読ください。すぐ下に記載されてます。

 

日本人の死因の第一位がガンです。

ガンの中でも大腸ガンの死亡者数が多いため、これを効果的に予防することでさらなる健康寿命の伸びが期待されます。

大腸ガンの原因にはいろいろ唱えられていますが、

近年では、原因の一つとして、牛肉などの赤身肉の直火料理(バーベキューや焼き肉など)により生成するヘテロサイクリックアミン(HCA) と呼ばれる物質に疑いの目が向けられています

 

エームズテストと呼ばれる方法で調べると、乳酸菌の菌体がHCAの毒性を抑制することがすでに分かっています。

動物実験の結果では、乳酸菌の菌体をマウスやラットに与えると、

HCAやその他の発ガン物質による大腸ガンの生成を抑制することが証明されています。

これを説明するメカニズムとして、これまでは、乳酸菌の菌体が消化管内でHCAを吸着し、糞便とともに排出するためだ、

と考えられてきました。

 

我々はこれに疑問を抱き、前回の報告で述べたように、乳酸菌の菌体より溶出する物質がHCAの発ガンを抑えているのではなかろうか?

と考えて、一連の実験を行いました。

 

左の図は、乳酸菌の菌体から溶出する抗HCA物質と

菌体へのHCAの吸着が正反対の関係にあることを示した図です。

青が菌体から溶出する抗HCA物質で、

赤が菌体へのHCAの吸着を示しています。

横軸は菌体を懸濁している食塩水の食塩濃度を表します。

食塩濃度が高くなるに従って抗HCA物質量が増え、

反対に吸着が減少するのが分かります。

右の図は、乳酸菌菌体の食塩懸濁液を繰り返し培養すると同時に

新しい食塩水に懸濁することによって

菌体から完全に抗HCA物質を除去したらどうなるか、

を調べた結果です。

培養時間とともに

懸濁液中の抗HCA物質が減少していくのが分かりますが、

同時に、菌体へのHCAの吸着も失われ、

6時間後には両者共に菌体から完全に排除されました。

左の図はpHとの関係を調べたものです。

丸が菌体へのHCAの吸着率、

青四角が懸濁液中の抗HCA物質量です。

 

pHが低くなると吸着率が低下し、

同時に懸濁液中には抗HCA物質が増えるのが分かります。

右の図は

人工胃液中に乳酸菌菌体を懸濁して37℃で培養した結果です。

赤が吸着、青が抗HCA物質です。

IEWというのは単に「水」のことです。

SGJは人工胃液です。

一見して分かるように、

水に懸濁した場合はHCAは乳酸菌菌体によく吸着します。

しかしながら、菌体を人工胃液中に懸濁した場合は吸着せず、

逆に人工胃液中に抗HCA物質が溶出されるのが分かります。

 

胃液のpH12レベルですので、

上で述べたpHの結果をよく裏付ける結果です。

 

22種類の乳酸菌を集めて6種類のHCAに対して調べた結果、

乳酸菌菌体に吸着するHCAと吸着しないHCAがあることが

分かりました。

吸着するHCAであっても、右の図から明らかなように、

胃液中では吸着力が失われ、

逆に胃液中に抗HCA物質を溶出する可能性が明らかとなりました。 

 

現在、研究所では、この物質の特定に向けて、精力的に研究中です。

 

複素環式アミンに対して抗変異原性を有する可溶性因子を乳酸菌菌体懸濁塩溶液中に産生するための至適条件並びに当該因子の特徴


2022年8月、食と健康の専門誌である New Food Industry 誌に、

喜源バイオジェニックス研究所の岡田研究員と中山所長との共著論文が掲載されましたので、要旨をお伝えいたします。

 

現時点において、日本女性の死因の第一位を占めるのが、大腸ガンです。

大腸ガンの原因には色々考えられますが、赤身肉の高温調理によって発生する複素環式アミン(ヘテロサイクリックアミン:HCA)は

有力な原因の一つと考えられています。

喜源バイオジェニックス研究所は、乳酸菌の菌体中にHCAに対抗する物質が存在することを発見し、これを2008年に報告しました。

今回は、この物質を乳酸菌菌体から抽出するための条件を検討し、

得られた抽出液を用いて各種の実験を行って、この物質の特徴を調べました。

上の図は、乳酸菌A乳酸菌Bを用い、各々の菌体をリン酸緩衝液中に懸濁したものです。

これを各種の温度で培養した結果、50℃で30分培養すると、Trp-P-1MeIQという名のHCAの毒性に対して効果がある物質が

安定的に抽出されることが分かりました。

 

 

次に、リン酸緩衝液中の何が有効なのか調べたところ、緩衝液中の塩化ナトリウム(食塩)が有効であることが分かりました。

 

 

 そこで、食塩濃度を色々変えて調べたところ、濃度が高い方がよく抽出されることが分かりました。

 

 

 

 

これらの条件下で培養した乳酸菌菌体懸濁液が

他の種類のHCAに対しても効果があるか調べたところ、

効果のあるものとないものがあることが分かりました。

最後に、乳酸菌菌体は生理的条件下においても同様な物質を産生するか、人工胃液と人工膵液を用いて調べました。

人工胃液(pH 2)に菌体を懸濁して371時間培養したところ、

人工胃液中にHCAに対する高い抑制効果が生じることが証明されました。

この効果は、その後に人工膵液で処理しても消失しませんでした。

すなわち、乳酸菌菌体を摂取すると、胃の中で胃液により菌体が消化され、その結果、HCAに対して効果的な物質が

胃液中に抽出される可能性が示されました。

また、この効果は、死菌体でも生きた菌と全く同様に発揮されることも明らかとなりました。

 

以上から、焼き肉やBBQなどを楽しむ際には乳酸菌を共に摂取することが体に良い可能性が示されました。

 

 

 

8-ヒドロキシダイゼイン:大豆麹乳酸菌発酵液が有する強力な抗酸化能の主体の可能性


2022年1月、

食と健康の専門誌である New Food Industry 誌に、

喜源バイオジェニックス研究所所長である中山雅晴博士の論文が

掲載されました。

以下、要旨をお伝えいたします。

 

喜源株式会社より販売のNK-1 の原液、大豆麹乳酸菌発酵液が

強力な抗酸化能を有することは、既報にて報告してまいりました。

また、これまでにも、

この抗酸化能の主体が8-ヒドロキシダイゼインである可能性を

液体クロマトグラフィー法などにより示してきました。

 

今回は、この大豆麹乳酸菌発酵液の強力な抗酸化能の主体が

確かに8-ヒドロキシダイゼインであることを

より強力な手法を用いて証明し、

さらに、各種の実験を行った結果、

8-ヒドロキシダイゼインは強い抗酸化能を有するのみならず、

酸化剤による細胞傷害を抑制するなど、

強力な細胞保護作用を有する可能性を明らかにしました。

 

8-ヒドロキシダイゼインは、

大豆麹乳酸菌発酵液の培地の主体である液体大豆麹の培養に伴って増加していきます。

右上の図は、液体大豆麹の培養に伴う各種イソフラボンの消長をグラフにしたものです。

ダイゼインの減少に伴って8-ヒドロキシダイゼイン (8-HD) が増加していくのが分かります。

 

 

 

このような8-ヒドロキシダイゼインの増加は

液体大豆麹の抗酸化能の増加ときれいに相関し(左図)、

統計学的にも有意差がありました (r = 0.995、 P<0.0001)。

 

また、液体クロマトグラフィーにより

液体大豆麹から8-ヒドロキシダイゼイン相当ピークを分取し、

質量分析と紫外光スペクトル分析を行った結果、

分取品は、想定される8-ヒドロキシダイゼインとほぼ完全な相同性を示しました。

 

以上の結果から、大豆麹乳酸菌発酵液が有する抗酸化能の主体は

8-ヒドロキシダイゼインによるもの、と確信するに至りました。

 

 

 

 

右の表は、

8-ヒドロキシダイゼインとその他のイソフラボンの

抗酸化能を比較したものです。

 

数値が低いほど抗酸化能が強いことを示します。

 

 

 

 

 

左の図は、t-BuOOH (ブチルペルオキシド:酸化剤) による

ウサギ赤血球膜の酸化を

8-ヒドロキシダイゼインが強力に抑制する結果を示したものです。

棒グラフが低いほど抑制が強いことを表します。

 

8-ヒドロキシダイゼインとよく似た物質である

8-ヒドロキシゲニステイン (8-HG) もまた

t-BUOOH によるウサギ赤血球膜の酸化を強く抑制しました。

 

対照としてはトロロックスを用いました。

抗酸化剤として有名なトロロックスですが、

この試験に関する限り、

強い抑制を示すことはありませんでした。

 

 

 

L929 という細胞に 

t-BUOOH と8-ヒドロキシダイゼインを同時に投与すると

t-BUOOH の活性酸素による細胞死が

ほぼ 100% 抑制されました。

ここでは棒グラフが高いほど抑制が強いことを表します。

 

8-ヒドロキシダイゼインによる抑制は

8-ヒドロキシゲニステインやトロロックスよりも有意に強く、

また、安定的でした。

 

さらに、L929細胞にあらかじめ8-ヒドロキシダイゼインを投与し、

その後に t-BUOOH で処理しても、

8-ヒドロキシダイゼインは顕著に細胞死を抑制しました。

 

 

L929細胞を8-ヒドロキシダイゼインで前処理しておくと

その後に t-BUOOH を投与しても細胞が守られることから、

8-ヒドロキシダイゼインは細胞内で t-BUOOH による活性酸素を

消去する可能性が示されました。

そこで、細胞内の活性酸素と反応すると発光する試薬を用いて

発光の程度を指標に実験を行ったところ、

8-ヒドロキシダイゼインは

細胞内でも活性酸素を消去することが証明されました

 

細胞内での活性酸素消去能も

三者間で8-ヒドロキシダイゼインが最大でしたが、

その差は他の二者と大きく異なるほどでははありませんでした。

                                             

従いまして、以上の結果と他の研究者による報告に基づき、酸化剤による細胞傷害を強くかつ安定的に抑制する8-ヒドロキシダイゼインは、

血中や細胞膜、あるいは細胞内で活性酸素を消去する能力に加え、細胞内で抗炎症作用に働く因子を活性化する能力を有し、

これらが総合的に働いて、最終的に酸化剤による傷害から細胞を保護するのでは?と結論付けました。

 

関連論文紹介

中山雅晴、前沢留美子、腰原菜水 「大豆麹乳酸菌発酵液の抗酸化能:in vitro 研究」 

New Food Industry 2011, Vol.53, 20-32 

中山雅晴、前沢留美子、腰原菜水 「大豆麹乳酸菌発酵液の抗酸化能-続報:in vitro 研究」

New Food Industry 2012, Vol.54, 55-66

 

乳酸菌菌体の塩懸濁液上清中に観察される

ヘテロサイクリックアミンに対する抗変異原性と菌体の吸着性との関係

 

岡田拓也、中山雅晴


2018年7月13日に

東京農業大学世田谷キャンパスで開催された

乳酸菌学会2018年度大会において、

喜源バイオジェニックス研究所の岡田拓也研究員が

研究発表を行いました。

以下、抄録の全文を掲載いたします。

 

 

<目的>

ヘテロサイクリックアミン(HCA)は、肉や魚の高温調理の

際に生成される変異原物質である。

乳酸菌がHCAに対して抗変異原性を有するという報告は

数多く、その機序として、乳酸菌菌体のHCAへの吸着性が

指摘されてきた。

我々は以前、乳酸菌菌体の塩懸濁液上清が

HCAに対する抗変異原性を有していることを見出した1)

そこで本研究では、乳酸菌菌体のHCAに対する抗変異原性の機序を明らかにするために、

乳酸菌菌体のHCAに対する吸着性と塩懸濁液上清中の抗変異原性との関係に着目して、一連の実験を行った。

 

<実験方法>

Lactobacillus alimentarius KN15株とLactobacillus plantarum KK2503株並びに乳酸菌JCM22菌種を用いた。

乳酸菌をNaCl溶液に懸濁して様々な条件下で培養を行い、遠心分離後に得られた上清を試料として、

Salmonella typhimurium TA98株を用いた復帰突然変異試験により、6種のHCAに対する抗変異原性を測定した。

菌体のHCAに対する吸着性は、高速液体クロマトグラフィーにより測定した。

 

<結果と考察>

HCAと菌体を100 mM NaCl溶液中に混じ、37℃18 rpm30分の条件下で培養を行った。

この時、各種乳酸菌懸濁液のHCAに対する総阻害率は懸濁液上清の阻害率と有意に相関した一方で、

菌体のHCAに対する吸着率と総阻害率との間には相関が見られなかった。

また、用いた6種のHCAには、菌体に対して比較的吸着性を示すものと全く吸着しないものとが存在した。

さらに、KN15株とKK2503株を100 mM NaCl溶液中に混じ、50℃120 rpmの条件下で繰り返し培養を行なった結果、

培養開始前に菌体が有していたHCAへの吸着性は培養開始30分後の測定に於いて有意に低下した。

一方、上清中の抗変異原性は培養に伴って有意に増加したが、その後徐々に低下し、8時間後には、吸着共々消失した。

KN15株とKK2503株並びにHCAを各々混じ、人工胃液(pH=2.0)で処理したところ、

菌体排除後の人工胃液中にHCAに対する高い抗変異原性が観察された一方で、菌体の吸着性は失われていた。

以上から、乳酸菌菌体のHCAに対する吸着性は抗変異原性の主体ではなく、

菌体から懸濁液中へ溶出される何らかの物質による効果が主要因であると考えられた。

また、当該物質は、胃液などの生理的条件下においても菌体から溶出される可能性が示されたと同時に、

吸着性と上清中の抗変異原性との間に見られる逆相関性から、両者間には何らかの関係があることが示唆された。

 

<関連論文>

1) M. Nakayama et al. Jpn J. Lactic Acid Bact. 19(3): 160-164 (2008)

<Title>

 

The relationship between the antimutagenic effects observed in the supernatants of saline-suspensions of Lactic Acid Bacteria on heterocyclic amines and the binding effects of the cells of LAB on the mutagens.

大豆麹乳酸菌発酵液の抗酸化能


抗酸化能を有する食物由来の物質としてお馴染みのものに、ビタミンCやビタミンEがあります。

ビタミンCは水溶性の抗酸化剤で、ビタミンEは油性の抗酸化剤です。

体内では、ビタミンCは血液などの水溶液中で働き、ビタミンEは脂肪組織や細胞膜などの脂質の多い場所で脂質の酸化防止に働いています。

実験の結果、大豆麹乳酸菌発酵液は、水溶液中でも油の中でも強い抗酸化能を発揮する事が分かりました(写真-1、2)

 

             写真-1: DPPHを用いた抗酸化試験                         写真-2: リノール酸自動酸化系での抗酸化試験

 

写真-1は、常態下で安定なラジカル分子であるDPPH1,1-dipheny-2-picrylhydrazyl)に対する

大豆麹乳酸菌発酵液(写真ではSKLと表示)の還元能を示したものです。

DPPHが酸化能を有している状態では紫色を示しますが、これが還元されて酸化能を失うと、黄色に変化します。

図で示したように、等濃度において、大豆麹乳酸菌発酵液は赤味噌(豆味噌)や米味噌に比べて、より強力な抗酸化能を示しました。

豆味噌は大豆を100%使い、米味噌は大豆をおよそ30%使う味噌です。

一方、ヨーグルトには全く抗酸化能がありませんでした。

従いまして、これらの発酵食品の抗酸化能は大豆に強く関連している事が分かります。

 

写真-2は、リノール酸自動酸化系の結果です。

リノール酸は分子内に二重結合を2個有している酸化しやすい脂肪酸です。

これに各種試料を加え、加熱攪拌して酸化させた後、生じた赤色の酸化物質を測定します。

赤い色が薄いほど、試料の抗酸化能が強いとみなされます。

写真で示したように、DPPHの試験と同じく、等量比較において、大豆麹乳酸菌発酵液(SKL表示)は、

赤味噌、米味噌、ヨーグルトに比べて最も強い抗酸化能を示しました。右端のVCとはビタミンCの事です。

DPPH試験などでは強力な抗酸化能を示すビタミンCも、油相においてはまったく効果を発揮しない事が分かります。

 

より詳細に行った実験が、図-3と4です。

図-3においては、キサンチン/キサンチンオキシダーゼ系で生じたスーパーオキサイド(O2-)に対する抗酸化能をMPEC法にて測定した結果を

DPPH法の結果と共に示してあります。

図-4においては、対照として、食品添加物などにしばしば使用される抗酸化剤であるBHT(butylated hydroxytoluene)を用いました。

 

図-3、4共に、写真-1、2を裏付ける結果となりました。

 

         図-3: MPEC法とDPPH法を用いた水相での抗酸化試験
         図-3: MPEC法とDPPH法を用いた水相での抗酸化試験
       図-4: リノール酸自動酸化法における各種発酵食品の抗酸化能
       図-4: リノール酸自動酸化法における各種発酵食品の抗酸化能

 

次に大豆麹乳酸菌発酵液のどの分画に抗酸化能があるのか調べたところ、

液体大豆麹をメタノールで抽出した分画中に強い抗酸化能がある事が分かりました(図-5)。

メタノールは水も油も溶かしますので、両者に対して抗酸化能を発揮するわけです。

 

         図-5: 各種溶媒による抽出物の抗酸化能比較(MPEC法)
         図-5: 各種溶媒による抽出物の抗酸化能比較(MPEC法)

 

液体大豆麹は大豆粉の水溶液に麹菌の胞子を接種し、振蕩培養装置で23週間ほど培養して作りますが、

培養0日から培養終了日までの液体大豆麹の抗酸化能を調べた所、培養に伴って抗酸化能が増強する事が分かりました。

-6は水相、図-7は油相の結果です。

 

            図-6: 液体大豆麹の培養日数と抗酸化能の変化(MPEC法)
            図-6: 液体大豆麹の培養日数と抗酸化能の変化(MPEC法)
     図-7: 液体大豆麹の培養日数と抗酸化能の変化(リノール酸自動酸化法)
     図-7: 液体大豆麹の培養日数と抗酸化能の変化(リノール酸自動酸化法)

 

さらに詳細に調べると、どうやら大豆のイソフラボンの一種が麹菌によって変化を受け、それに伴って抗酸化能が増強する事が分かってきました。

この抗酸化能の強いイソフラボン分画を液体クロマトグラフィーによって分取~精製し、同定したところ、

8-ヒドロキシダイゼイン(8-hydroxydaidzeinである事が分かりました(図-8)。

 

           図-8: 液体クロマトグラフィーでの8-ヒドロキシダイゼインのピーク
           図-8: 液体クロマトグラフィーでの8-ヒドロキシダイゼインのピーク

 

この物質は、豆腐や豆乳などの大豆食品、あるいは味噌や納豆などの大豆発酵食品にも殆ど検出されない種類のイソフラボンで、

数あるイソフラボン化合物の中でも極めて抗酸化能が強い物質です。

その抗酸化力はビタミンCやビタミンE、あるいはBHTとほぼ同等であり、

加えてビタミンCは水相で、ビタミンEは油相でのみ働くのに対し、

8-ヒドロキシダイゼインは水相油相の両者において等しく強い抗酸化力を発揮する事が分かりました(図-9と図-10)。

 

      図-9: ビタミンCと8-ヒドロキシダイゼインの抗酸化能の比較(水相での結果)
      図-9: ビタミンCと8-ヒドロキシダイゼインの抗酸化能の比較(水相での結果)
     図-10: BHTと8-ヒドロキシダイゼインの抗酸化能の比較(油相での結果)
     図-10: BHTと8-ヒドロキシダイゼインの抗酸化能の比較(油相での結果)

 

また、8-ヒドロキシダイゼインはチロシナーゼと呼ばれる酵素を阻害する作用がありますが、

チロシナーゼは皮膚のメラニン色素合成に関与する酵素です。

長年にわたる紫外線の作用により肌のシミが生じますが、チロシナーゼ阻害活性を有する物質には、肌のシミを防ぐ作用が期待されています。 

 

8-ヒドロキシダイゼインは液体大豆麹中で多く産生される物質であり、

数ある健康食品の中でも液体大豆麹を用いた機能性食品は、

喜源バイオジェニックス研究所の大豆麹乳酸菌発酵液に限られます(特許第4794486号)。

 

論文紹介

中山雅晴、前沢留美子、腰原菜水 「大豆麹乳酸菌発酵液の抗酸化能:in vitro 研究」 

New Food Industry 2011, Vol.53, 20-32 

中山雅晴、前沢留美子、腰原菜水 「大豆麹乳酸菌発酵液の抗酸化能-続報:in vitro 研究」 

New Food Industry 2012, Vol.54, 55-66

乳酸菌の抗変異原性


焼き肉などに含まれる強力な変異原物質であるヘテロサイクリックアミン(HCA)に対する乳酸菌の抗変異原性を調べました。

 

発ガン物質の中にはDNAに損傷を与えて細胞に変異を引き起こす性質を持つものがありますが、

このような物質を変異原物質と呼び、その性質を変異原性と呼びます。

変異原物質の働きを抑制する物質が抗変異原物質で、その性質を抗変異原性と呼びます。

 

乳酸菌の菌体にはHCAを吸着する能力があり、この吸着力こそが乳酸菌の抗変異原性そのものである、との説に基づき、  

120種類にのぼる乳酸菌の菌体をそれぞれ等濃度に食塩水に懸濁し、冷蔵庫で1年間保管したものを試料として、

それぞれの乳酸菌菌体のHCAに対する吸着力をエームズテストにより調べました。

HCAにはMeIQを用い、各懸濁液にMeIQを混ぜて反応させた後に懸濁液上清中のMeIQの変異原活性を調べ、

活性の減少の程度を指標として評価しました。

 

その結果、

下図で示した3種類の乳酸菌菌体懸濁食塩水に、MeIQに対する強い吸着活性が見られました(下図の赤い棒グラフ)。

ところが、全懸濁液を遠心して得られた上清液(上澄み液)からもほぼ同等の活性が見られました(下図の青い棒グラフ)。

上澄み液中には乳酸菌の菌体は全く存在していませんので、

ここで観察されたMeIQに対する抗変異原活性は、菌体による吸着能によるものではない事は明らかです。

これを裏付ける結果として、遠心によって得られた菌体分画には弱い活性しか観察されませんでした(下図の黄色い棒グラフ)。

 

この結果から、

乳酸菌菌体を懸濁した食塩水上清中に、HCAに対する強い抗変異原性を有する物質が存在する事が示唆されます。

試料は菌体懸濁液を1年間保管して得られたものである事から、

乳酸菌菌体から何らかの物質が食塩水中に移行した可能性が考えられます。

現在、喜源バイオジェニックス研究所では、その物質の特定ならびにメカニズムの解明に向け、体制を整えつつあるところです。

 

論文紹介 

Nakayama M, Maezawa R, Koshihara N, and Nakamura Y. Evidence suggesting that a soluble factor majorly contributes to the antimutagenic property of lactic acid bacteria against the heterocyclic amine,

2-amino-3,4-dimethyl-3H-imidazo[4,5-f]quinoline.

Japanese Journal of Lactic Acid Bacteria 2008, Vol. 19, 160-164 

乳酸菌発酵液の大腸ガン抑制機能


喜源バイオジェニックス研究所は、大豆麹乳酸菌発酵液の他に、

大豆粉水溶液を直接乳酸菌と酵母で発酵させた乳酸菌発酵液の生産も行っています。

この乳酸菌発酵液の大腸ガン抑制作用について、マウスを用いて実験を行いました。

 

ジメチルヒドラジンと呼ばれる発ガン物質を注射して、マウスに大腸ガンを作らせました。

この時、マウスに乳酸菌発酵液を餌に混ぜて食べさせ、生じた大腸ガンの数を調べました。

その結果、乳酸菌発酵液を与えたマウス群の大腸ガンの発生率が低下しました。

また、大腸ガンの前ガン病変の数を数えて調べたところ、

餌に混ぜる乳酸菌発酵液の量に応じて前ガン病変数が有意に抑制されました(下図)。

その後の実験結果から、乳酸菌発酵液の大腸ガン抑制機能は乳酸菌菌体分画に存在する事が分かりました。

 

論文紹介 

Nakayama M, Kitajyo T, Kasuga H, Kanabayashi T, and Nakamura Y. Inhibitory Effects of the Extract of Soy Protein Fermented with Lactic Acid Bacteria and Yeasts on 1,2-Dimethylhydrazine-Induced Colon Cancer and Aberrant Crypt Foci of Mice. Bioscience and Microflora 2002, Vo. 21, 163-170