精神に及ぼす機能


食物由来の機能性成分の中で、精神に何らかの効果を及ぼすものとして代表的なものは、コーヒーやお茶に含まれるカフェインです。

コーヒーやお茶は、いわゆる嗜好品に含まれる食品ですが、

元来嗜好品とは、多かれ少なかれ精神に作用を及ぼすが故に好まれる食物や飲料を指すものです。

カフェインの他には、お酒のアルコール、タバコのニコチンなどが代表的です。

 

一方で、食の三次機能を

抗酸化能や抗変異原性を有する成分や、あるいは免疫系やホルモン系、神経系などに影響を与えてヒトの健康に良い影響を及ぼす食成分

として定義しましたので、

上記物質がこれに該当するか微妙なところがあります。

 

最近では、いくつかのアミノ酸に

「精神安定作用」や「睡眠の質を高める作用」

などが報告されています。

 

精神安定作用が報告されているアミノ酸には、テアニンがあります。

テアニンはお茶に含まれ、これを摂取すると脳内でα派が発生し、

精神に安らぎをもたらすといわれます。

テアニンは、お茶の木の根において窒素化合物から合成され、

茶葉に移行します。

その後、茶葉の中で日光によってカテキン類に転換されます。

テアニンはお茶の中でも玉露のような高級茶葉に多く含まれますが、

玉露を作るときは茶摘み前にお茶の木に覆いをかけ、

日光を遮る措置を施します。

その結果カテキンの生成が抑えられ、

テアニンと旨味が増す事となります。

 

睡眠の質を高める作用を持つアミノ酸には、グリシンがあります。

グリシンには抹消の血流を促進する事によって手足からの体温を放散する働きがあります。

これを就寝前に摂取すると深部体温の低下が生じ、速やかな眠気が得られ、その後に深い睡眠をもたらすとの事です。

 

アミノ酸の一つ、ガンマーアミノ酪酸(GABA)に精神安定作用の報告があります。

 

神経には興奮系神経と抑制系神経の二つの系統があり、

抑制系神経の興奮によってシナプスを介して興奮系神経の興奮を抑制する仕組みになっています。

GABAは抑制系神経が興奮系神経の興奮を抑えるときの伝達物質として働きますので、

一時期、GABAの摂取によって神経の過剰な興奮が抑えられる事が期待されましたが、

腸管から吸収されたGABAは血液脳関門と呼ばれる関所を通過して脳神経に達する事ができない事が分かりましたので、

食物から得られたGABAが直接に脳神経に働いて神経の興奮を静める事は無いと考えられています。

 

しかしながら、動物実験やヒトへの試験などで、GABAを経口的に摂取した場合の精神安定作用が報告されています。

この場合のメカニズムとしては、

末梢の交感神経の興奮を抑制する事でアドレナリンの分泌を抑え、その結果として精神の安定をもたらすのでは、と考えられています

 

大豆麹乳酸菌発酵液で用いているLactococcus lactis KN1は、培地中のグルタミン酸を利用してGABAを作ります。

大豆麹乳酸菌発酵液の原液では、

100g中におよそ30mgGABAが含まれますが、これはGABAを多く含むと言われている発芽玄米の3です。

大豆麹乳酸菌発酵液の姉妹品である大豆ペプチド発酵液では、100g中におよそ80mgGABAが含まれていますので、

発芽玄米の8となります。

これもLactococcus lactis KN1が産生したものです。

また、大豆麹乳酸菌発酵液は、100g中に30mgのグリシンも含みます。

 

大豆麹乳酸菌発酵液の精神安定作用は、今後の研究課題の一つです。